2025年建築基準法改正のポイントを解説:4号特例の縮小や省エネ基準適合の義務化など

建築基準法

2025年4月に施行される建築基準法改正は、建築業界に大きな変化をもたらします。4号特例の縮小や省エネ基準適合の義務化など、重要な変更点を詳しく解説し、建築士や設計士が知っておくべき対応策をご紹介します。

建築基準法改正の背景と目的を理解する

2025年4月に施行される建築基準法改正は、日本の建築業界にとって大きな転換点となります。この改正は単なる制度変更ではなく、持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みです。

改正の背景:省エネ対策と木材利用促進

日本が2050年カーボンニュートラル達成と2030年度温室効果ガス46%削減を目標に掲げる中、建築分野での省エネ対策が急務となっています。建築物分野は国内エネルギー消費の約3割を占めており、この分野での省エネ推進が目標達成に不可欠です。

改正の目的:建築物の安全性と環境性能の向上

今回の改正は建築物の安全性向上と環境性能の強化を同時に実現することを目的としています。従来の4号特例による審査省略制度を見直し、すべての建築物で構造安全性と省エネ性能の確実な確保を図る方針です。

改正の施行時期と対象建築物

改正法は2025年4月1日に施行され、この日以降に着工する建築物が対象です。新築だけでなく増改築工事も対象に含まれ、建築確認申請前に着工した建築物には適用されません。対象範囲は住宅から非住宅まで幅広く含まれています。

改正による建築業界への影響

建築業界は業務プロセスの大幅な見直しが必要になります。設計図書の作成範囲拡大、確認申請手続きの複雑化、工期延長の可能性など、従来の業務フローでは対応困難な変化が生じます。人材育成と体制整備が急務となっている状況です。

4号特例の縮小とその影響を把握する

4号特例の縮小は今回の改正で最も注目される変更点です。これまで多くの小規模建築物で適用されてきた審査省略制度が大幅に見直され、建築確認申請の対象範囲が拡大します。

4号特例とは何か?

4号特例は木造2階建て以下で延べ面積500㎡以下の建築物について、建築士が設計・工事監理を行う場合に構造関係規定等の審査を省略できる制度です。1983年に導入され、一般的な戸建住宅の多くがこの特例の対象となっていました。

4号特例の縮小による変更点

改正後は従来の4号建築物が新2号建築物と新3号建築物に再分類されます。木造2階建てや延べ面積200㎡超の平屋建ては新2号建築物となり、構造関係規定等の審査が必要になります。審査省略制度は平屋建て200㎡以下のみに限定されます。

新2号建築物・新3号建築物への区分変更

新2号建築物は2階建て以上または延べ面積200㎡超の平屋建てが対象で、すべての項目が建築確認審査の対象です。新3号建築物は平屋建てで延べ面積200㎡以下の建築物が対象で、従来の4号特例と同様の審査省略制度が継続されます。

設計・施工プロセスへの影響

新2号建築物では構造計算書や省エネ関連図書の提出が義務化され、設計業務の負荷が大幅に増加します。審査期間も35日以内となり、従来の7日以内から大幅に延長されるため、工事スケジュールの見直しが必要です。

省エネ基準適合の義務化について知る

省エネ基準適合の義務化は、すべての新築建築物に対して省エネルギー性能の確保を求める制度です。従来は一部の建築物のみが対象でしたが、改正により対象範囲が大幅に拡大されます。

省エネ基準適合義務化の概要

改正により、原則としてすべての新築住宅・非住宅について省エネ基準への適合が義務付けられます。省エネ基準は外皮性能基準と一次エネルギー消費量基準の2つの指標で構成され、住宅は両方、非住宅は一次エネルギー消費量基準への適合が必要です。

対象となる建築物の範囲

省エネ基準適合義務の対象は、新築建築物だけでなく増改築を行う建築物も含まれます。ただし、10㎡以下の建築物、居室を有しない建築物、歴史的建造物、応急仮設建築物などは適用除外で、新3号建築物は義務対象ですが適合確認は不要です。

建築確認申請時の必要書類

省エネ基準への適合を確認するため、エネルギー消費性能適合性判定が必要です。ただし、仕様基準に基づく住宅、設計住宅性能評価を受けた住宅、長期優良住宅の認定を受けた住宅は適合性判定を省略し、建築確認審査と一体的に確認されます。

設計・施工への影響と対応策

設計段階では断熱性能や省エネ設備の選定が重要になり、従来よりも高度な知識と技術が求められます。施工段階では省エネ性能を確保するための施工品質管理が重要となり、完了検査時には省エネ基準への適合性がチェックされます。

構造規制の合理化とその内容を理解する

構造規制の合理化は、建築技術の発展や木材利用促進を踏まえた制度の見直しです。従来の画一的な基準から実情に応じた合理的な基準への転換が図られ、設計の自由度向上が期待されます。

構造計算の簡略化と対象建築物の拡大

階数3以下かつ高さ16m以下の木造建築物については、高度な構造計算が不要となり、二級建築士でも設計・工事監理が可能になります。一方で、構造計算が必要な木造建築物の規模は延べ面積500㎡超から300㎡超に引き下げられ、対象範囲が拡大されます。

木造建築物の構造基準の見直し

従来の「軽い屋根」「重い屋根」という区分が廃止され、建築物の実際の荷重に応じた壁量・柱の小径の算定方法に変更されます。省エネ化による建築物の重量増加に対応し、より実情に即した構造設計が可能になります。

防火規定の合理化と適用範囲

大規模木造建築物の防火規定が合理化され、3,000㎡を超える建築物でも構造木材の表し使用が可能となります。防火区画の強化や燃え白設計による対策方法が認められ、木造建築物のデザイン性と安全性の両立が実現されます。

中層木造建築物の耐火性能基準の緩和

5〜9階建ての中層木造建築物については、最下層の耐火性能要件が2時間から90分に緩和されます。これにより中層木造建築物の設計自由度が向上し、都市部での木造建築普及が促進されることが期待されています。

改正による設計・施工への影響を考える

建築現場 打ち合わせ

建築基準法改正は設計・施工の各段階で大きな変化をもたらします。従来の業務フローでは対応困難な部分が多く、新たな体制整備と業務プロセスの見直しが不可欠です。

建築確認申請の手続きの変更

新2号建築物では構造関係規定や省エネ基準の審査が追加され、提出書類が大幅に増加します。審査期間も従来の7日以内から35日以内に延長されるため、申請から着工までのスケジュール管理が重要で、事前相談制度の活用や審査機関との密な連携により、円滑な手続きをする必要があります。

設計図書の作成と提出のポイント

構造計算書、省エネ関連図書、設備図などの作成が新たに必要になります。図面間の整合性確保が求められ、設計変更時の影響範囲も拡大するため、より綿密な設計検討と品質管理体制の構築が必要です。BIMなどのデジタルツールを活用した効率的な図書作成システムの導入が有効な対策となります。

施工計画の見直しと対応策

省エネ基準適合のため、断熱工事や気密工事の品質管理がより重要になります。完了検査時には省エネ性能の確認も行われるため、施工段階での品質確保と検査対応の準備が必要です。施工現場での品質管理体制の強化と、専門知識を持つ技術者の配置が求められます。

コストや工期への影響とその対策

設計費用の増加、審査期間の延長、高性能設備の導入により、総事業費と工期の増加が予想されます。早期の準備と効率的な業務プロセスの構築により、影響を最小限に抑える対策が求められています。顧客への事前説明と理解促進により、適正な費用負担と工期設定についての合意形成を図ることが重要です。

建築士・設計士が取るべき対応策を検討する

図面

建築士・設計士は改正内容を正確に理解し、業務体制の見直しを図る必要があります。技術的な対応だけでなく、組織的な取り組みとして改正への準備を進めましょう。

改正内容の把握と社内教育の実施

改正内容の正確な理解と社内への周知が最初のステップです。関連法令の解釈、技術基準の詳細、実務への適用方法について継続的な学習と情報収集を行い、設計チーム全体のスキル向上を図る必要があります。定期的な勉強会開催や外部講習会への参加により、最新情報の共有と実務対応力の向上を実現しましょう。

業務プロセスの見直しと効率化

設計図書の作成範囲拡大に対応するため、業務フローの見直しと効率化が必要です。BIMなどのデジタルツールの活用、設計チェック体制の強化、外部専門家との連携体制構築により、品質向上と効率化の両立を図ります。従来の手作業による図面作成から統合的なデータ管理システムへの移行により、作業効率の大幅な改善が期待できます。

建築確認申請の準備と対応

確認申請書類の作成方法習得、審査機関との連携体制構築、申請スケジュール管理の徹底をしましょう。事前相談の活用や申請書類のチェックリスト作成により、審査期間の短縮と一発承認の確率向上を目指します。各審査項目の具体的な判定基準を理解し、申請前の自主チェック体制を強化することで、円滑な審査進行ができます。

顧客への情報提供とサポート体制の強化

施主に対する改正内容の説明、コスト・工期への影響説明、省エネ性能向上のメリット説明が必要です。わかりやすい資料作成と丁寧な説明により、顧客の理解と納得を得ながら事業を進める体制を整備します。改正によるメリットと必要性を明確に伝え、長期的な資産価値向上の観点から顧客との信頼関係を構築することが大切です。

まとめ

2025年の建築基準法改正は建築業界の転換点となります。4号特例縮小と省エネ基準義務化への対応には、早期の準備と体制整備が不可欠です。改正内容を正確に把握し、適切な対策を講じることで円滑な業務継続をしましょう。

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