
飲食店の収益性と顧客満足度を決める重要な設計項目がカウンター席の寸法です。幅や奥行き、高さの適切な設定により、回転率向上と居心地の良さを両立できます。本記事では成功するカウンター席設計の具体的な寸法と設計ポイントを詳しく解説します。
カウンター席の基本となる寸法とは?
飲食店の成功を左右するカウンター席の寸法設計について解説します。適切な寸法により、お客様の居心地や回転率、売上にまで大きく影響します。基本となる寸法を理解することで、店舗コンセプトに最適なカウンター席を実現できます。
幅は60~75cmが標準、ゆったり席ならさらに広く
一人当たりの横幅は60cmが最も一般的な標準寸法とされており、この寸法は日本人の平均体格を考慮した最小限の快適スペースです。回転率重視の業態では60cm、居心地重視の場合は70cm以上を確保することで、お客様の満足度が向上します。
奥行き45~60cmが基本。提供物に応じて調整を
奥行きの標準寸法は45~60cmの範囲で設定されることが多く、提供するメニューによって調整が必要です。軽食や飲み物のみの場合は40cm程度でも問題ありませんが、複数の皿を同時に提供する場合は50cm以上の奥行きが必要です。
高さはローミドルハイの選び方と用途別特性
高さは大きく3つのタイプに分類され、それぞれ異なる特性を持っています。ローカウンター(70cm前後)は長時間滞在に適し、ハイカウンター(100~110cm)は回転率向上に効果的です。業態や店舗コンセプトによって最適な高さを選択することが成功の鍵となります。
スツールの高さ(SH)はTHと250~300mm差が理想
スツールの座面高(SH)とカウンターの天板高(TH)の差は、250~300mmが理想的な寸法です。この寸法差により、お客様が快適に食事や飲み物を楽しめる姿勢を保てます。ハイカウンターの場合は足が床につかないため、足掛けステップの設置が必要になります。
幅・奥行きが及ぼす顧客体験への影響

寸法設計がお客様の体験に与える影響は想像以上に大きく、売上や顧客満足度に直結します。幅と奥行きの組み合わせにより、店舗の回転率や居心地のバランスが決まります。最適な寸法設計により、お客様にとって心地よい空間を作り出すことができます。
横幅60cm:回転率重視、75cm:ゆったり感を重視
横幅60cmの設計は隣席との距離が近くなるため、短時間利用に適した回転率重視の設計です。一方、75cmの設計では隣席との距離にゆとりが生まれ、長時間滞在しやすい環境を作り出します。業態や客単価に応じて適切な横幅を選択することが重要です。
奥行き45cm:飲物中心、60cm:皿中心の使い勝手
奥行き45cmの設計は飲み物やグラスを中心とした利用に最適化されており、バーや軽食店に向いています。奥行き60cmの設計では複数の皿を並べることができ、しっかりとした食事を提供する店舗に適しています。提供するメニューの特性を考慮した奥行き設計が必要です。
幅×奥行きから全体カウンター長さを逆算
必要な席数から全体のカウンター長さを逆算する計算方法があります。例えば8席必要な場合、一人当たり60cm幅であれば4.8mの長さが必要です。店舗の間口や動線を考慮しながら、最適な席数とカウンター長さのバランスを見つけましょう。
回転率や居心地を考慮した最適バランス設計
回転率と居心地のバランスを取る設計では、業態に応じた寸法の調整が必要です。ファストフード系では60cm幅×45cm奥行きで回転率を重視し、高級店では75cm幅×60cm奥行きで居心地を重視します。客単価や滞在時間の目標に合わせた寸法設計が成功の鍵となります。
高さ別のカウンター設計と用途提案
カウンターの高さは店舗の雰囲気や使用目的を決定づける重要な設計項目です。高さごとに異なる特性を理解し、業態に最適な選択をすることで、お客様にとって使いやすく、店舗運営にも効果的なカウンターを実現できます。
ローカウンター(70cm前後):食事向きの安定設計
高さ70cm前後のローカウンターは、お客様が足を床につけて座れるため、長時間の食事に最適な設計です。居酒屋や和食店、レストランなどで多く採用されており、ゆったりとした食事時間を提供できます。ただし、スタッフがお客様を見下ろす形になるため、圧迫感を与えないよう配慮が必要です。
ミドルカウンター(85~95cm):会話しやすい中間層
高さ85~95cmのミドルカウンターは、スタッフとお客様の目線が近くなり、自然な会話を促進する設計です。カジュアルレストランや寿司店などで採用されることが多く、親しみやすい雰囲気を演出できます。足のつま先がギリギリ床につく高さのため、適度な安定感を保てます。
ハイカウンター(100~105cm):バー・立ち飲みに最適
高さ100~105cmのハイカウンターは、バーや立ち飲み店に最適な設計です。スタッフとお客様の目線が同じ高さになるため、コミュニケーションが取りやすく、活気のある雰囲気を演出できます。足が床につかないため、足掛けステップの設置が必須となります。
高さ変更時の床調整やスツール仕様に関する注意点
カウンターの高さを変更する際は、厨房側の床高や既存設備との関係を慎重に検討する必要があります。床の段差調整や配管の移設が必要になる場合があり、工事費用が大幅に増加する可能性があります。スツールの高さや仕様も合わせて変更が必要となるため、トータルコストを考慮した計画が重要です。
スツールとの調和:座り心地と動線設計
カウンター席の快適性はスツールとの組み合わせで決まります。適切な高さの関係性と間隔設計により、お客様の座り心地とスタッフの動線効率を両立できます。スツールの選択と配置は、カウンター席全体の使い勝手を大きく左右する重要な設計項目です。
シート高24~28in(約60~70cm)は標準的仕様
スツールのシート高は24~28インチ(約60~70cm)が標準的な仕様とされています。この高さはハイカウンターとの組み合わせで最も快適な座り心地を実現します。身長や体格の違いに対応するため、高さ調整機能付きのスツールを選択することで、より多くのお客様に快適に利用していただけます。
SHとTHの差を利用し、足掛けステップ設計
座面高(SH)とテーブル高(TH)の差を活用した足掛けステップの設計により、足が床につかないハイカウンターでも快適性を確保できます。足掛けの高さは床から30~40cm程度が理想的で、スツール本体に付いているものと、カウンター側に設置するものがあります。
スツール幅・間隔150~200mmで快適席間を確保
スツール同士の間隔は150~200mmが快適な席間を確保する標準寸法です。間隔が狭すぎると隣席との接触が増え、広すぎると空間効率が悪くなります。お客様が着席・離席する際の動作も考慮し、適切な間隔設定が重要です。
可動式スツールや収納スペース設計の工夫
可動式スツールの採用により、営業時間外の清掃作業や席数の調整が容易になります。カウンター下部に収納スペースを設けることで、スツールをコンパクトに収納でき、店舗の空間を有効活用できます。荷物置き場やフック類の設置も、お客様の利便性向上に効果的です。
カウンター素材選びと耐久性の重要性

素材選択は店舗の雰囲気形成と長期的な運営コストに大きく影響します。デザイン性と実用性のバランスを取りながら、メンテナンス性や耐久性を考慮した素材選びをしましょう。業態や予算に応じて最適な素材を選択することで、長く愛される店舗作りができます。
木材(無垢・突板・集成)の特徴とコスト差
無垢材は最も高級感があり、経年変化による味わいが魅力ですが、価格が高く反りや割れのリスクがあります。突板は無垢材の質感をリーズナブルに再現でき、集成材は価格が安く扱いやすい特徴があります。それぞれの特性を理解し、店舗のグレードや予算に応じた選択が必要です。
モルタル・セメント仕上げでモダン演出
モルタルやセメント系の左官仕上げは、モダンでスタイリッシュな雰囲気を演出できる素材です。耐久性が高く、色や質感のバリエーションも豊富で、他店との差別化を図れます。ただし、施工費用が高く、ひび割れのリスクもあるため、下地処理を含めた慎重な施工が必要です。
耐水・耐汚性を考慮した塗装とメンテナンス
飲食店のカウンターには耐水性と耐汚染性が求められるため、適切な塗装処理が必要です。ウレタン塗装やアクリル塗装など、用途に応じた塗装を施すことで、日常的な汚れや水分から素材を保護できます。定期的なメンテナンスサイクルも考慮した素材選択が長期的なコスト削減につながります。
業務用家具との相性を踏まえた素材選定
カウンターの素材は、店内の他の家具や内装材との調和を考慮して選定する必要があります。スツールやテーブル、床材との色合いや質感のバランスを取ることで、統一感のある空間を作り出せます。清拭性や抗菌性など、業務用途に適した機能性も重視して選択をしましょう。
動線・ゾーニングから見るカウンター配置
効率的な店舗運営には、カウンター配置と動線設計の最適化が不可欠です。お客様とスタッフの動きを考慮した配置により、サービス品質の向上と運営効率の両立ができます。安全性や法的要件も満たしながら、使いやすい店舗レイアウトを構築しましょう。
客導線がスムーズな通路幅90~120cmを確保
お客様が快適に移動できる通路幅は90~120cmの確保が必要です。車椅子利用者への配慮を含めると120cm以上が理想的で、混雑時でもスムーズな移動を可能にします。カウンターへの着席・離席時の動作も考慮し、十分な通路幅を確保することでお客様の満足度向上につながります。
厨房やレジへのアクセス導線とのバランス
カウンター配置は厨房からの料理提供動線とレジでの会計動線を考慮する必要があります。スタッフが効率的に移動できる配置により、サービススピードの向上と労働負荷の軽減ができます。お客様の動線と交差しないよう配慮し、安全で効率的な店舗運営を可能にする設計をしましょう。
防火・衛生・清掃性に配慮した設計フロー
法的要件である防火基準や衛生基準を満たす配置設計が必要です。避難経路の確保、厨房との適切な距離、清掃作業のしやすさなどを考慮した設計により、安全で衛生的な店舗運営ができます。保健所への申請や消防署への届出もスムーズに進められる配置計画をしましょう。
可変ブースやイベント席として活用する余白設計
将来的な用途変更やイベント開催に対応できる柔軟性のある設計も重要です。カウンター席の一部を可動式にしたり、余白スペースを設けたりすることで、団体客への対応や特別なイベント開催が可能になります。長期的な店舗運営を見据えた柔軟な設計により、様々な営業形態に対応できる店舗作りができます。
まとめ
カウンター席の寸法設計は店舗運営の根幹を支える重要な設計項目であり、幅60~75cm、奥行き45~60cm、高さは業態特性に応じた慎重な選択が成功の鍵を握ります。素材選びから動線設計まで総合的に検討することで、顧客満足度と収益性を両立したカウンター席を作ることができるでしょう。
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