居抜きオフィスとは、前テナントの内装や家具をそのまま引き継いで使えるオフィスです。初期費用を大幅に削減できる点と入居までのスピードの速さが主な魅力で、スタートアップから中小企業まで幅広い企業に選ばれています。メリットとデメリットを正しく理解したうえで、自社に合った選び方を確認しましょう。
居抜きオフィスとは?意味と仕組みをわかりやすく解説
前テナントの内装・設備・什器をそのまま引き継いで入居できるオフィスを「居抜きオフィス」と呼びます。通常の賃貸オフィスと異なり退去時の原状回復工事が省略されるため、コストと時間の両面で入退去の双方にメリットが生まれます。
居抜きオフィスの定義
前テナントが使用していた内装造作や設備・什器を撤去せず、次の入居者がそのまま活用できる賃貸オフィスです。カーペット、パーティション、デスク、空調、配線などが引き継ぎ対象となり、前テナントの原状回復義務を新テナントが承継する点が最大の特徴です。
スケルトン物件・セットアップオフィスとの違い
内装の有無と費用負担者が、3形態の本質的な違いです。スケルトン物件は自由度が高い反面、内装費を全額借主が負担します。セットアップは貸主が内装を用意するため月額賃料が周辺相場の1.2~1.4倍になりやすく、居抜きはその中間に位置します。
今「居抜きオフィス」が注目されている背景
テレワーク普及によるオフィス縮小の動きと建築資材費の高騰が重なり、居抜き物件への需要が急増しています。初期費用を抑えつつ素早く移転したい企業を中心に広まり、内装や什器を再利用することで廃棄物を削減できるSDGsの観点からも評価が高まっています。
居抜きオフィスを選ぶ5つのメリット
居抜きオフィスが多くの企業に選ばれる背景には、費用面とスピード面にわたる複合的な恩恵があります。入居時のコスト削減にとどまらず、退去時まで見据えたトータルのメリットを5つの視点から整理し、自社の移転計画に活かしましょう。
初期費用を大幅に抑えられる
内装工事が不要なため、移転コストを大幅に圧縮できます。内装工事の坪単価は20~40万円が相場で、20坪規模であれば400~800万円の削減効果が見込まれます。削減した資金を採用や事業投資に充てられる点は、特に成長期の企業にとって大きな優位性となります。
開業・移転までのスピードが速い
スケルトン物件での内装工事に2~4ヶ月かかるのに対し、居抜きオフィスは最短2週間~1ヶ月での入居が実現します。資金調達直後や事業拡大の局面で「すぐに拠点を構えたい」企業にとって、このリードタイムの短縮は競争優位に直結する要素です。
内装デザイン・工事の手間を省ける
業者の選定、レイアウト設計、打ち合わせ、見積もりといった一連の工事プロセスが不要になります。移転プロジェクトの担当者が費やす時間と労力を大幅に削減でき、通常業務への影響を最小限に抑えながら移転を進めることができます。
家具・什器・設備を引き継げる
デスクや椅子、会議室の造作、空調機器、照明器具など業務に必要な什器・設備が揃った状態で入居できます。スタートアップにとっては初期備品コストの削減効果が100~500万円規模に上るケースもあり、資金効率を大きく高める要因となります。
退去時の原状回復費用を抑えやすい
次のテナントが居抜きで入居できれば、退去時の原状回復工事が不要になるケースがあります。原状回復費用の相場は坪単価3~10万円とされており、規模が大きいほど削減効果も高まります。短期での移転を繰り返す企業に特に有利な特徴です。
居抜きオフィスのデメリットと注意点

コスト削減が目的であるにもかかわらず、確認不足により想定外の出費が発生するケースも多く報告されています。メリットが豊富な一方で事前に把握しておくべきリスクも存在するため、5つのデメリットを整理して契約前の備えを万全にしましょう。
レイアウトの自由度が低い
前テナントの間仕切り・配線・什器配置をそのまま使う前提のため、自社の業務に合った動線を一から設計することが難しくなります。「壁を1枚変えたい」だけでも管理会社に認められないケースがあり、業務効率への影響を内見の段階で丁寧に確認することが必要です。
設備の老朽化・故障リスク
引き継ぐ設備はすべて中古品のため、入居後に空調の不具合やデスクの劣化など予期せぬ修繕費用が発生することがあります。故障時の費用は原則として入居者側の負担となるため、内見時に空調の稼働年数や配線の状態を必ず確認することが重要です。
造作譲渡費が別途発生するケース
残置物の引き継ぎには無償譲渡・有償譲渡・リース引き継ぎの3パターンがあり、有償の場合は数十万~数百万円の造作譲渡料が別途発生します。リース機器が混在するケースでは月額費用が継続するため、什器ごとの所有権と契約形態を内見の段階で確認することが大切です。
自社ブランディングに合わない可能性
前テナントの内装スタイルが自社のブランドイメージと合致しないケースがあります。エントランスや応接室など来客が訪れるエリアの印象は採用や営業に直結するため、内見時にデザインの質感や什器の状態が自社イメージと合っているかを慎重に見極める必要があります。
物件数が少なく希望条件で見つけにくい
居抜き物件は前テナントの解約予告から退去までの3~6ヶ月程度しか募集されないため、通常物件と比べて絶対数が少ない状況です。条件の良い物件は公開前に契約が決まることも多く、希望エリア・規模・レイアウトがすべて揃った物件に短期間で出会えるとは限りません。
居抜き・スケルトン・セットアップオフィスを徹底比較
3つのオフィス形態はそれぞれ初期費用・入居スピード・カスタマイズ性・退去条件が大きく異なります。どの軸を優先すべきかは企業の状況によって変わるため、4つの比較軸から違いを整理したうえで最適な選択肢を検討しましょう。
初期費用・賃料の違い
居抜きとスケルトン物件の賃料水準は周辺相場と同等ですが、居抜きは内装工事費・什器購入費が不要な分だけ初期費用の総額が大幅に下がります。セットアップは内装コストが賃料に転嫁されるため、同面積でも月額賃料が周辺相場の1.2~1.4倍になる傾向があります。
入居までのスピードの違い
スケルトン物件の内装工事完了には2~4ヶ月を要しますが、居抜きとセットアップはどちらも最短2週間~1ヶ月での入居が見込まれます。ただし居抜きは前テナントの退去日に引き渡しタイミングが左右されるため、スケジュール調整が特に重要です。
デザイン・カスタマイズ性の違い
自由度が最も高いのはスケルトン物件で、ゼロから設計できる反面、全コストが借主負担となります。居抜きは前テナントのデザインを引き継ぐため当たり外れがあり、セットアップはデザイン性が高い半面、独自カスタマイズには制限が設けられる場合があります。
退去時の原状回復対応の違い
スケルトン物件は全額借主負担での原状回復が原則で、居抜きは前テナントの義務を継承するため退去費用が物件ごとに変わります。セットアップは貸主負担の造作については原状回復不要なケースが多く、退去時のコスト管理という点で優位性があります。
居抜きオフィスの探し方|主な4つのルート
居抜き物件は通常のポータルサイトだけでは見つけにくく、公開前に契約が決まるケースも多い状況です。物件数が限られる分、早い段階から複数のルートで情報収集のパイプを確保することが、条件に合う物件への対応スピードを高めます。
オフィス仲介会社に依頼する
居抜きの取扱実績が豊富な仲介会社に相談することで、ポータルサイト未掲載の非公開物件情報をいち早く入手できます。造作譲渡の交渉や手続きまで一括サポートを受けやすく、居抜きに特化したサイトを運営する仲介会社ほど物件の流通量も豊富に揃っています。
居抜き専門のマッチングサイトを使う
居抜き物件に特化したマッチングサイトは通常の不動産ポータルより情報が集積されており、エリア・坪数・業種で絞り込んで探せます。ただし閲覧前に契約が完了しているケースも多いため、登録後は新着通知を活用して情報を逃さない仕組みを作ることが必要です。
SNS・スタートアップコミュニティで情報収集
オフィスの縮小・移転を検討している企業がSNSやスタートアップ向けコミュニティで退去情報を発信するケースがあります。こうした非公式ルートの物件は仲介サイトへの掲載前に話が進みやすいため、業界のネットワークを積極的に活用する姿勢が重要です。
既存テナントへ直接アプローチする
移転先エリアで内装がよく作り込まれたオフィスのテナントに直接問い合わせる方法もあります。前テナントにとっても原状回復費用を節約できるため交渉が成立しやすく、仲介コストを抑えながら良質な物件に出会える可能性があります。手続きが複雑になるため、専門家への相談を並行させましょう。
居抜きオフィスを選ぶときのチェックポイント

居抜きオフィスは現況渡しが基本のため、内見時に見落とした問題は原則として入居者が対処することになります。事前に5つの確認項目を整理してから内見に臨む姿勢が、入居後のトラブル防止と予期せぬコスト発生を避けることに直結します。
立地・アクセス・周辺環境の確認
最寄り駅からの実際の徒歩ルートや雨天時の導線、周辺のコンビニや飲食店の充実度など、従業員が日々利用する視点で立地を評価することが重要です。ハザードマップ上の浸水リスクや地盤の状況も確認しておくと、BCP(事業継続計画)対策の観点から適切な判断ができます。
賃料・共益費・更新料の総額確認
月々の賃料だけでなく、共益費・更新料・保証金といったランニングコストの全体像を把握することが欠かせません。造作譲渡費や退去時の原状回復費用を含めたトータルコストで比較することで、セットアップオフィスとの適切な比較判断が可能になります。
譲渡される造作・什器のリスト精査
内見時には譲渡対象の什器・設備の一覧を書面で確認し、実物と照合することが必須です。リース機器が混在している場合は引き継ぎ後に月額費用が発生するため、什器ごとに購入品かリース品かを確認したうえで、造作譲渡契約書に明記するよう求めましょう。
設備の老朽化と修繕履歴の確認
空調の製造年・メンテナンス履歴、電気容量、ネット回線の速度と種類(光ファイバーかVDSLか)など、業務に直結するインフラの状態を内見時に必ず確認します。老朽化した設備は入居後すぐに修繕費用が発生するリスクがあり、現状の診断を怠ってはなりません。
契約条件と退去時の原状回復ルール
「居抜き入居=居抜きで退去できる」とは限らないため、退去時にスケルトン戻しが必要か否かを契約書で必ず確認します。原状回復の範囲が曖昧なままでは退去時に数百万円単位の費用が発生するリスクがあるため、入居前に概算見積もりを取得して条件を書面に明記しましょう。
居抜きオフィス契約時に確認したい重要ポイント
契約書の内容は一度サインすると変更が難しいため、締結前の精査が特に重要です。居抜きオフィスは通常の賃貸借契約に加えて造作譲渡契約も必要になるため、4つのポイントを確認してリスクを最小化した契約を目指しましょう。
造作譲渡契約の内容と価格設定
造作譲渡契約では、譲渡対象物の一覧・価格・引き渡し時の状態・瑕疵担保責任の範囲を書面で明確にすることが基本です。口頭での合意はトラブルの元となるため、什器ごとに数量・状態・金額を写真付きで記録し、双方の合意を書面に残すことが欠かせません。
賃貸借契約の特約事項と更新条件
特約事項には原状回復の詳細な条件や中途解約の制限が記載されることが多く、見落としやすい重要項目が集中しています。更新条件や解約予告期間の長さも確認のうえ、入居後の経営計画と整合しているかを事前に判断することが重要です。
修繕・メンテナンス責任の範囲
引き継いだ内装・設備の修繕費用は原則として入居者側が負担するのが居抜きオフィスの基本ルールです。どの設備が借主負担かを契約前に明確にすることで、入居後の修繕費用をめぐるトラブルを防げます。空調設備や電気系統は高額修繕につながりやすいため特に確認が必要です。
引き渡しタイミングと立ち会い項目
前テナントの退去日と入居日をできるだけ隙間なく繋げることが求められるため、スケジュール調整が特に重要です。鍵の引き渡し時には造作譲渡リストと現物を照合し、設備の動作確認やクリーニングの完了確認を立ち会いのうえで行うことが大切です。
居抜きオフィスに関するよくある質問
居抜きオフィスの検討を進めるなかで、費用・契約条件・適合企業に関する疑問が多く寄せられます。5つのよくある質問への回答を通じて契約前に把握しておくべき知識を整理しておくと、実際の物件探しをスムーズに進めることができます。
居抜きオフィスの賃料相場はどれくらい?
賃料水準は通常の賃貸オフィスとほぼ同等で、立地や築年数によって決まります。内装工事費が賃料に上乗せされているセットアップオフィスとは異なり、居抜きは周辺相場と同等の賃料で内装付きの物件に入居できるため、ランニングコストの面でも費用対効果が高い形態です。
造作譲渡費の相場はいくら?
物件の規模や内装の質によって大きく異なりますが、無償から数百万円まで幅があります。有償の場合は什器の耐用年数と残存価値をもとに算定されるのが一般的で、内装の豪華さや会議室数が多い物件ほど金額が高くなる傾向があります。事前に内訳の明示を求めることが重要です。
スタートアップ・中小企業でも借りられる?
資金力に関係なく入居できますが、貸主による審査(会社謄本・決算書・事業計画書の提出)が必要です。創業間もない企業では審査が通りにくいケースもあるため、居抜き物件の取扱実績が豊富な仲介会社を通じて交渉を進めることが、審査通過の確率を高めるうえで効果的です。
退去時の費用はどうなる?
前テナントの原状回復義務を引き継ぐため、退去時にスケルトン戻しが必要になるケースがあります。ただし次の入居者が居抜きで決まれば費用を大幅に削減できる場合もあります。退去費用の目安は坪単価3~10万円で、入居前に概算見積もりを取得して資金計画に組み込むことが重要です。
内装を一部変更したい場合はどうする?
軽微なパーテーションの組み替えや壁紙の張り替えは許可されるケースがありますが、間仕切り壁の増設や設備の移設は貸主・管理会社との協議が必要です。入居後に必要箇所だけリニューアル工事を加える手法を活用すると、コストを抑えながら自社仕様に近づけることができます。
まとめ|居抜きオフィスは「コスト・スピード・自由度」のバランスで選ぶ
居抜きオフィスはコスト削減とスピード入居に優れる一方、原状回復義務の引き継ぎや設備の老朽化リスクへの備えが欠かせません。自社の事業フェーズと予算・レイアウト要件を軸に、コスト・スピード・自由度のバランスを見極めることが、移転の成否を左右する判断軸となります。
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