
建築プロジェクトを成功させるには、設計料の相場を正確に把握することが欠かせません。住宅・店舗・オフィスそれぞれで異なる料金体系と算出方法を理解し、適切な予算計画を立てることで、理想の建物を実現できるでしょう。
建築設計における“設計料”とは何か
建築プロジェクトにおいて工事費とは別に発生する設計料について、基本的な仕組みと業務内容を理解することが重要です。設計料の構成や算出方法を正しく把握することで適切な予算計画が立てられます。
設計料の定義と含まれる業務(設計+監理など)
設計料とは、建物の設計図書作成から工事監理まで、建築士が担当する業務に対して支払う報酬を指します。設計業務では顧客との打ち合わせによる条件整理、法令調査と役所協議、基本設計と実施設計の図面作成、確認申請業務が含まれます。
設計事務所・建築士に支払う報酬の仕組み(費率・単価・最低額)
設計事務所の報酬体系は主に3つの方式で構成されています。総工事費の一定割合で計算する費率方式では、工事費の10~15%程度が相場です。坪単価方式では3万~10万円程度の単価設定が一般的です。
ハウスメーカー・工務店併用時の設計料算出ルール
ハウスメーカーや工務店に依頼する場合、設計料は工事費の2~5%程度と設計事務所より安価に設定されています。規格化された住宅プランを基本とするため、設計にかかる手間を削減できることが理由です。
オプション業務(構造計算・申請業務等)の追加料の存在
標準業務を超える追加業務には別途料金が発生します。構造計算や省エネ計算、長期優良住宅申請、各種許認可手続きなどが該当し、業務内容により数十万円から百万円以上の追加費用がかかる場合があります。
住宅設計料の一般相場と事例
住宅設計では依頼先により設計料が大きく変動するため、ハウスメーカーと設計事務所の料金体系を把握する必要があります。実際の事例とともに相場を確認し、適切な業者選択につなげることで理想の住まいを実現できます。
ハウスメーカー・工務店:総工事費の2~5%が基準
ハウスメーカーや工務店では、総工事費の2~5%が設計料の基準となります。3,000万円の住宅建築では60万~150万円程度が目安です。設計料が無料となる場合もありますが、実際は工事費に含まれています。
設計事務所(建築士):工事費の10~20%または㎡単価系
設計事務所への依頼では工事費の10~20%が相場で、3,000万円の住宅では300万~600万円程度になります。㎡単価方式では2.5万~3万円程度が目安です。オリジナル設計のため費用は高くなりますが、個性的な住宅を実現できます。
実例:3,000万円住宅で60~150万円~300~600万円
3,000万円の住宅建築において、工務店依頼では60万~150万円、設計事務所では300万~600万円の設計料が実際の相場です。依頼先により4~10倍の開きがあるため、求める住宅の内容と予算のバランスを慎重に検討する必要があります。
最低設計料の設定と坪単価方式の注意点
狭小住宅やリノベーションでは工事費や面積が小さくても設計業務量は変わらないため、最低設計料300万円程度を設定する事務所が多くあります。坪単価方式では面積が大きくなるほど単価が下がる傾向にあります。
店舗設計料の相場と業態別の違い
店舗設計料は業態により必要な設備や工事内容が異なるため、飲食店・美容室・小売店別の相場確認が必要です。居抜きとスケルトンの違いを理解し、業態に応じた予算計画を立てることで成功する店舗経営の基盤を築けます。
総施工費の10~20%が設計料率の目安
店舗設計の料金体系では、総施工費の10~15%程度が設計料の相場となっています。設計から施工まで一貫して行う業者では、この割合で設計料を算出するケースが一般的です。複雑なデザインや特殊な造作が必要な場合は、比率が高くなる傾向があります。
坪単価による設計料:3万~10万円/坪の考え方
店舗面積から算出する坪単価方式では、1坪あたり3万~10万円程度が相場です。小売店は比較的安価で、給排水設備が複雑な飲食店では高くなる傾向があります。狭い店舗ほど坪単価は割高になり、広くなるにつれて割安になります。
業態別相場:居抜きorスケルトン、飲食・美容での動向
居抜き物件の小売店では200万~300万円、美容室の全面改装で400万~600万円が相場で、スケルトン物件の飲食店では1,200万~1,600万円程度です。給排水設備や厨房機器の設置が必要な業態ほど、設計料も高額になる傾向があります。
最低設計料:1店舗数10万~100万円以上のケース
小規模店舗でも業務量に見合う最低設計料が設定されます。10坪以下の狭小店舗でも設計士の技術料や基本業務は必要となるため、規模に関係なく50万~100万円程度の最低料金を設定する設計事務所が一般的です。
オフィス・商業空間専用設計の相場視点

オフィスや商業施設の設計では企業のブランディング要素も含むため、一般的な設計料とは異なる算出方法があります。働き方改革に対応した設計の特徴を理解し、適切な投資判断を行うことで企業価値向上につなげられます。
オフィス設計料率:10~15%前後が一般的
オフィスデザインでは工事費の10~15%程度が設計料の相場となっています。坪単価では3万~10万円程度が目安で、デザインの複雑性や企業のブランディング要素により変動します。ABWやコミュニケーション重視の空間設計では、比率が高くなる場合があります。
OC・商業施設では坪単価○万円相当の設計料も少なくない
商業施設やオフィスビル(OC)の設計料では、坪単価30万~80万円程度の設計料が発生するケースが少なくありません。特に商業施設内テナントでは物件状況により費用が変動し、スケルトン物件では坪単価40万~80万円、居抜き物件でも30万~60万円程度が相場となっています。
総工事一括請負 vs 設計管理分離によるコスト差
設計から施工まで一括で依頼する場合、中間マージンを省けるため費用を抑えられます。設計と施工を分離発注する場合は、設計事務所と施工会社それぞれに費用が発生し、連携管理の手間もかかりますが、専門性の高い提案を受けられます。
設計+家具・什器提案込みの契約形態と設計料反映方法
オフィス設計では家具・什器の選定も含めた包括的な提案が一般的です。設計料に什器費用を含める場合と、別途算出する場合があります。什器込みの契約では総額の管理がしやすい反面、内訳の透明性に注意が必要です。
設計料の算出方法と依頼前に確認すべきポイント
設計料の算出には複数の方法があるため、契約前に料金体系と支払条件を詳細に確認しましょう。追加費用の発生条件も事前に把握し、予算オーバーを防ぐことでプロジェクトを円滑に進められます。
総工事費からの料率計算法の利点と注意点
工事費の一定割合で設定する料率方式は、全体予算の管理がしやすい利点があります。しかし工事費が変動すると設計料も連動するため、高グレード仕様を選択した場合に設計料が想定以上に高くなる可能性があります。事前に工事費の上限を定めることが大切です。
坪/㎡単価方式のメリット・デメリット
面積に基づく単価方式では、工事費の変動に関係なく設計料が確定するメリットがあります。ただし狭小物件では坪単価が割高になり、広い物件でもスケールメリットが働かない場合もあります。最低設計料の設定も確認するようにしましょう。
最低限の設計料設定のチェックと内訳確認
小規模プロジェクトでは業務量に見合う最低設計料が設定されているかを確認しましょう。設計料の内訳では、基本設計・実施設計・監理業務のそれぞれの費用配分と、追加業務の料金体系を事前に把握することが重要です。
契約形態・支払タイミング・中止時の返金ルール
設計契約では契約形態と支払スケジュールを明確にしておきましょう。設計料は一般的に基本設計完了時に30~50%、実施設計完了時に30~40%、工事監理完了時に20~30%の分割払いが採用されます。プロジェクト中止時は完了業務分のみ請求され、未着手業務分は返金対象となる等、契約書で明記しておく必要があります。
設計料に影響する要素と交渉のコツ

設計料は様々な条件により変動するため、コストに影響する要因を理解し効果的な交渉方法を身に付けることが重要です。費用を抑える具体的な方法を活用し、予算内で理想を実現することで満足度の高い建築が可能になります。
フルオーダー設計 vs 定型プラン・標準仕様の違い
フルオーダー設計では一から図面を作成するため設計料は高額になりますが、個性的な空間を実現できます。定型プランや標準仕様を活用すると設計の手間を削減でき、料金を抑えられます。求める独自性と予算のバランスを考慮して選択することが重要です。
施工範囲・工事状態(居抜き vs スケルトン)による変動
居抜き物件では既存設備を活用できるため設計料を抑えられますが、スケルトン物件では全面的な設計が必要で料金は高くなります。工事範囲が限定的な部分改修では設計料も抑えられる傾向にあるので、物件の状態を事前に確認しましょう。
プロポーザル・相見積もりでの比較ポイント
複数の設計者から提案を受ける際は、設計料だけでなく提案内容の質、実績、担当者との相性を総合的に評価しましょう。最安値が必ずしも最良の選択ではなく、後々の追加費用や品質低下のリスクも考慮する必要があります。
コストを抑える方法:パターン設計、設計監理省略など
設計料を抑える方法として、パターン化された設計の活用、監理業務の省略、設計図面の簡素化などが挙げられます。ただし品質や安全性に影響する部分は削減を避け、本当に必要な業務かどうかを慎重に判断することが重要です。
ケーススタディ:住宅・店舗・オフィスでの費用比較
実際のプロジェクト事例を通じて用途別の設計料の違いとコストパフォーマンスを具体的に比較検討します。ROI換算による効果測定方法を理解し、投資判断に活用することで長期的な事業成功につなげられます。
3,000万円住宅×工務店/設計事務所の設計料比較
3,000万円の住宅建築において、工務店依頼では60万~150万円(2~5%)、設計事務所では300万~600万円(10~20%)の設計料が発生します。工務店は規格化により効率性を重視し、設計事務所は個別対応による独自性を追求する違いがあります。
20坪美容室/30坪飲食店の設計料実例
20坪美容室の全面改装では400万~600万円、30坪飲食店のスケルトン施工では1,200万~1,800万円の設計料が相場です。美容室では給排水設備とインテリアデザインが中心となり、飲食店では厨房設備と消防法対応が設計料を押し上げる要因となります。
家具提案・監理まで含んだオフィス設計の費用目安
50坪のオフィス設計では150万~500万円程度が相場で、家具・什器の提案を含む場合は総額の10~15%程度になります。働き方改革に対応した多様なワークスペースの設計や、企業ブランディングを重視したデザインでは上位の料金設定になる傾向があります。
ROI換算のための設計コスト対効果指標算出方法
設計投資の効果測定では、ROI(投資利益率)の考え方を活用できます。設計料を投資額とし、売上向上や業務効率化による利益を効果として算出します。特に店舗やオフィスでは、魅力的な設計による集客効果や従業員の生産性向上を数値化することで、設計料の妥当性を評価できます。
まとめ
設計料は依頼先や建物用途により大きく変動するため、事前の相場把握が重要です。工事費の割合や坪単価など複数の算出方法を比較検討し、オプション業務費用も含めた総合的な予算計画により、満足度の高い建築プロジェクトを実現しましょう。
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