建設業でRPAを活用するには?現場と管理部門で進める業務自動化の進め方

RPA 業務効率化

建設業界では人手不足と労働時間規制の強化により、既存の労働力で生産性を向上させる必要性が高まっています。定型業務の自動化を実現するRPAは、書類作成から資材発注、勤怠管理まで幅広い業務を効率化できる有効な手段です。本記事では建設業におけるRPA活用の具体的な方法と導入のポイントを解説します。

建設業でRPAを導入すべき背景と目的を整理しよう

建設業界は構造的な人手不足と膨大な事務作業に直面しており、2024年4月からの時間外労働上限規制の適用でさらなる効率化が求められています。RPAによる業務自動化は、限られた人員で生産性を維持・向上させるための現実的な解決策となります。導入前に自社の課題を明確化し、自動化によって達成したい目標を具体的に設定しておく必要があります。

建設業が抱える人手不足・書類業務・定型業務の増大という課題

建設業界では高齢化による熟練労働者の引退と若手人材の不足により、既存の従業員一人ひとりに過度な負荷がかかっています。施工管理から事務作業まで多くの業務プロセスが複雑に絡み合いながら進行するため、作業ミスの発生や書類作成の遅延、進捗把握の漏れといったリスクが顕在化しています。労働時間規制の厳格化が進む中、業務効率化は企業競争力の維持に直結する重要課題となっています。

RPAとは何か、建設業への適用が期待される理由

RPAはソフトウェアロボットを活用して、パソコン上で行われる定型的な作業を自動化する技術です。データ入力や転記、ファイル操作といった繰り返し発生する業務を、人間の代わりにロボットが実行します。建設業界では施工管理ツールやCADなど既存システムとの組み合わせにより、操作に手間のかかる処理を迅速かつ高精度に実行可能です。24時間365日稼働できる特性を活かせば、限られた労働力でも処理量を維持できます。

建設業におけるRPA導入ケースと効果

実際の建設業界では、協力会社からの請求書データ入力、見積書作成と送付、施工日報の整理、資材発注処理といった業務でRPAが活用されています。ある企業では補修サービスの紙面データをシステムに登録する業務を自動化し、年間5,000万円相当の人的コスト削減に成功しました。別の事例では得意先からの受注メール処理業務を自動化し、年間5,000時間以上のコスト削減を実現しています。

導入前に明確にしておくべき目的とスコープ

RPA導入を成功させるには、まず自社の業務フローを俯瞰し、自動化が可能なルーティンワークを抽出する作業が不可欠です。効率化のインパクトやイメージしやすさ、導入ハードルの低さなどを総合的に考慮し、優先順位をつけて進める必要があります。どの業務をどこまで自動化するのか、導入後の効果をどのような指標で測定するのかを事前に定めておかないと、成果が出ているか判断できなくなります。

建設業でRPAが活用されている典型的な業務領域

PC ミーティング

建設業界のバックオフィス業務や現場管理業務には、繰り返し発生するデータ照合や資材発注に関する作業が多数存在します。RPAを導入すれば、図面作成から施工管理、紙面データのシステム登録まで、さまざまな業務を効率化できます。特に定型的で反復性の高い業務は自動化の効果が高く、人的ミスの削減と作業時間の短縮により、企業全体での生産性向上につながります。

許可申請・契約書管理・施工体制台帳など書類関連の自動化

建設業法により多くの書類作成や保管が義務付けられており、国や自治体への申請書類、請書、契約関連資料など正確な書類作成・入力・チェックが求められます。RPAは必要な情報をシステムから抽出して特定のフォーマットに入力・転記したり、画像を添付したりする手間のかかる作業を自動で処理します。工程表や作業員名簿、施工体制台帳の作成においても、情報をもとにテンプレートへ自動入力できます。

資材発注・在庫管理・請求書処理といった“モノ・カネ”業務の効率化

資材や備品の申請情報をもとに発注書を自動作成し、メール送信までを自動化すれば、発注ミスの防止や作成・送付作業の時短につながります。在庫管理および資材発注業務をRPAで自動化すると、タイムリーに在庫状況を把握できるようになり、納期の遅延を減らして営業生産性や顧客満足度の向上も期待できます。協力会社から受領した請求書のデータを自動入力する業務も実現可能です。

施工進捗報告・安全チェックリスト・勤怠集計など現場/管理部門における自動化

各現場から提出される施工日報が紙やPDFで届く場合、内容を読み取って社内システムや台帳へRPAが転記すれば、記録ミスや作業の遅れを防げます。従業員の勤怠データの集計と勤務表の作成も自動化でき、勤怠システムからデータをダウンロードし、超過残業時間や勤務時間の集計、給与計算システムへの反映までの作業を一貫して処理可能です。手入力によるミスや集計の手間が減少します。

導入企業の成功事例:例えば年間数百時間~数千時間削減の報告

実際の導入企業では、メールやFAXで受理した補修サービスの紙面データを社内システムに登録する業務を自動化し、年間で5,000万円相当の人的コスト削減に成功した例があります。別の企業では得意先からの受注メール処理業務を自動化し、年間5,000時間以上のコスト削減を達成しました。月間で3,000件ほどの情報を電子申請サイトに登録する業務をRPAで自動化し、250時間分の削減に成功した事例も報告されています。

RPA導入のステップ・流れ:建設業ならではの視点も含めて

RPA導入を成功させるには、自社の業務特性を理解したうえで段階的に進める必要があります。まず業務の洗い出しと定型化可能な作業の選定から始め、自動化設計を経て本格運用へと移行します。建設業特有の現場業務と事務業務の連携や、アナログ処理が残る環境への配慮も必要です。効果測定と改善を繰り返しながら、組織全体にRPAを定着させる体制づくりが重要となります。

業務洗い出し・定型化可能業務の選定

現場やバックオフィスで繰り返し発生する業務をピックアップし、どの部分を自動化すると大きな効果が得られるかを見極める作業が最初のステップです。建設業界では書類発行や在庫管理、メール担当業務などがRPA導入の効果を得やすい領域とされています。業務の工数を可視化してルール変更や作業手順が少ない業務から優先的に取り組むと、短期間で成果を実感できます。

自動化設計と建設業特有の留意点

対象業務が決まったら、RPAツールが操作できるシステム環境かどうかを確認し、具体的な自動化フローを設計します。建設業界では現場独自の判断を要するケースが多いため、すべてをロボットに任せるのではなく、人の判断が必要な部分と自動化できる部分を明確に切り分ける必要があります。RPAツールの操作性や連携可能なシステム範囲などを比較検討し、自社の業務内容や要件を満たす選択を行います。

本格運用・横展開・運用ルール整備

段階的にRPAを導入するため、まず小規模部門や特定のプロセスで試験的な運用を行い、効果を測定する流れが基本です。試験導入の結果を踏まえて修正・改善を行い、本格導入のための運用設計を固めていきます。RPAにはトラブル対応やルールの策定と更新などの業務が必ず発生するため、正しく運用し続けるためのガイドラインを作成して運用体制を構築します。継続的なメンテナンスが不可欠です。

効果測定・改善サイクル・定着化のための体制づくり

RPA導入後は、業務効率化や生産性向上に対して効果が示されているかを定期的にチェックし、改善点があれば更新する必要があります。実際にどれだけの業務時間を削減できたか、導入効果が得られていない場合は何が問題なのかを見極める作業が重要です。RPAの操作に慣れた担当者が増えれば業務改革のスピードも上がるため、業務設計の視点を持った人材を育成していく姿勢が大切です。

設計・営業担当者が押さえておきたいRPA導入時のチェックポイント

工事工程表作成 建築士

建設業界の設計・営業担当者がRPA導入を提案する際には、技術的な実現性と業務適合性の両面から検証する必要があります。建材や什器、設備との連携可能性や、現場特有の属人化した作業をどう標準化するかが重要な観点です。セキュリティ対策や働き方改革への対応も含め、顧客に対して導入コストと削減効果を明確に示す提案力が求められます。

建材・什器・設備との連携:データ取得・システム連携の確認

RPAは社内のさまざまなシステムと連携できますが、導入前に既存の基幹システムや在庫管理システム、CADや施工管理ツールなどとの互換性を確認する必要があります。建材や什器の発注システム、設備管理ツールから必要なデータを自動で取得できるか、システム間でのデータ連携がスムーズに行えるかを検証します。オンプレミスの基幹システム、Excel、クラウドツールなど幅広く対応できるツールを選定します。

現場環境や作業フローの“属人化”をどう定型化するか

建設業界では現場ごとに作業手順が異なったり、特定の担当者しか対応できない業務が存在したりするため、属人化が課題となっています。RPAで自動化を進めるには、まず業務プロセスを可視化し、誰が行っても同じ結果になるよう手順を標準化する作業が不可欠です。現場担当者へのヒアリングや各部署との調整を丁寧に行い、実際の作業フローを詳細に記録します。定型化できる部分から段階的に取り組みます。

セキュリティ・ログ管理・働き方改革への対応

RPAはソフトウェアであるため、外部からの悪意ある攻撃や不正アクセスを受ける可能性があり、セキュリティ対策が必須です。ロボット側で作業ログを保存し、進捗状況やエラーの状況を可視化できる機能があれば、管理者が運用保守を比較的容易に行えます。働き方改革の観点では、RPAによる業務自動化が残業削減やストレス軽減につながり、労働環境の改善と人材定着率の向上に寄与します。

営業提案時に説明すべき「導入コスト・削減効果・ROI」の見せ方

顧客にRPA導入を提案する際には、初期投資と継続的なランニングコストを明確に示す必要があります。RPAツールのライセンス費用だけでなく、導入前の業務整理やプロセス設計にかかる時間、要員の育成コストや研修プログラムの整備費用も含めた総コストを提示します。削減効果については、具体的な業務時間の短縮量や人件費の削減額を数値で示し、投資回収期間を計算して説得力を持たせます。

よくある失敗パターンと回避策:建設業ならではの落とし穴

RPA導入は適切に進めないと、期待した効果が得られないまま頓挫する危険性があります。建設業界特有の課題として、業務定義の甘さによる自動化範囲の拡大、現場と事務のフロー差、RPAだけに頼った業務改善の不足などが挙げられます。実際の失敗事例から学び、同じ過ちを繰り返さないための対策を理解しておく必要があります。

業務を定義せずにロボット化対象を広げすぎて失敗する例

自社の業務フローを十分に可視化せずにRPAを導入すると、自動化に適さない業務までロボット化しようとして失敗するケースがあります。複雑な判断を必要とする業務や、イレギュラー対応が多い業務に対しては、RPAの効果が限定的となるため注意が必要です。小規模な業務から試験的に自動化を始め、効果を確認しながら段階的に拡大していく方針が現実的です。成果を出しやすい部分から取り組む姿勢が成功の鍵です。

現場と事務のフロー差・システム未統合が原因で運用が滞る例

建設業界では現場業務と事務業務が明確に分かれており、それぞれで使用するシステムやツールが異なるケースが多く見られます。現場からの情報が紙やFAXで届き、事務側でデジタル化する作業が発生するなど、情報の流れが統一されていない環境では、RPAの効果を十分に発揮できません。RPAを導入する前に、まず業務フロー全体を見直し、不要な手順を削減したり、システム間の連携を整備したりする作業が必要です。

RPAだけで解決しようとして業務改善を伴わず負荷が逆転したケース

既存の非効率な業務プロセスをそのまま自動化しても、根本的な問題解決にはつながりません。無駄な作業手順をRPAで高速化しても、業務全体の最適化は進まないため、かえって管理工数が増加する可能性があります。導入前に業務プロセスを棚卸しし、不要な作業を削減したり、手順を簡素化したりする業務改善を優先すべきです。RPAの導入を契機として、継続的な改善サイクルを回す習慣を組織に根付かせる姿勢が重要です。

まとめ

建設業界では人手不足や労働時間規制の強化により、既存の労働力で生産性を向上させる必要性が高まっています。RPAを活用すれば、書類作成から資材発注、勤怠管理まで幅広い定型業務を自動化でき、年間数千時間のコスト削減を実現した企業も存在します。導入を成功させるには、業務の洗い出しと定型化可能な作業の選定から始め、小規模な試験運用を経て段階的に拡大する方針が有効です。現場と事務のフロー差やシステム未統合といった建設業特有の課題に配慮しながら、業務改善とRPA導入を並行して進めれば、組織全体の業務効率化と従業員の労働環境改善を同時に実現できます。

◤カグポン◢◤
家具業界初の営業効率化ツール
家具をポンッと配置して、その場で3Dの提案書と見積もりが作れます!

▼詳細はこちら
https://www.kagupon.com/

この記事を読んだ方におすすめ