準耐火建築物とは?基準やイ準耐・ロ準耐の違いをわかりやすく解説

建築現場 チェック

建築基準法で定められた準耐火建築物は、火災時の安全性確保において重要な役割を果たしています。耐火建築物よりも緩やかな基準でありながら一定の防火性能を持ち、建築コストと安全性のバランスが取れた構造として多くの建物で採用されています。イ準耐とロ準耐の違いや適用条件を理解することで、最適な建築計画を立てることができます。

準耐火建築物とは?基本的な定義と基準を理解する

建築物の防火性能には複数の段階があり、その中でも準耐火建築物は火災時の安全性確保において重要な役割を果たしています。一定の防火性能を持ちながらも、耐火建築物より緩やかな基準で建築できるため、多くの建物で採用されています。

準耐火建築物の定義と目的

建築基準法第2条第9号の3に定められた準耐火建築物は、主要構造部が準耐火性能を満たし、延焼のおそれのある開口部に防火設備を設けた建築物です。火災発生時に一定時間建物の倒壊を防ぎ、延焼を抑制することで避難時間を確保し、周辛建物への被害拡大を防ぐことを目的としています。

準耐火建築物が求められる背景と現状

都市部での建物密集化が進む中、火災時の被害を最小限に抑える建築物の重要性が高まっています。市街地における火災の危険を防ぐため、都市計画法により防火地域や準防火地域が指定されており、これらの地域では一定規模以上の建物に準耐火性能が求められるようになりました。

耐火建築物との違いと比較

耐火建築物が最大3時間の耐火性能を要求されるのに対し、準耐火建築物は最大1時間の耐火性能で建築可能です。火災による倒壊防止と延焼防止の両方を目的とする耐火建築物に比べ、主に延焼防止を重視した構造となっており、建築コストや設計の自由度においてバランスの取れた選択肢となります。

準耐火建築物の構造部位ごとの耐火性能

主要構造部である壁、柱、床、梁、屋根、階段それぞれに対して異なる耐火時間が設定されています。45分準耐火では各部位が45分以上、1時間準耐火では1時間以上の耐火性能が必要です。屋根と階段については、建物の規模に関わらず30分以上の耐火性能が求められており、火災時の安全性を確保しています。

イ準耐とロ準耐の違いを詳しく解説

準耐火建築物は構造の違いによってイ準耐とロ準耐の2つに分類されます。これらは主要構造部の要求事項や適用条件が異なるため、建築計画において正しい理解が必要です。それぞれの特徴を把握することで、最適な構造選択が可能になります。

イ準耐の定義と適用条件

イ準耐は主要構造部を準耐火構造とした建築物で、建築基準法第2条第1項第9号の3イに規定されています。1時間準耐火基準に適合する場合はイ-1、45分準耐火基準に適合する場合はイ-2と呼ばれていましたが、現在これらの用語は使われていません。告示仕様または大臣認定仕様のいずれかを選択して建築します。

ロ準耐の定義と適用条件

ロ準耐は主要構造部を準耐火構造としない建築物で、建築基準法施行令第109条の3に基づく技術的基準に適合する必要があります。ロ-1は外壁耐火を特徴とし、ロ-2は主要構造部の不燃化を図る構造です。主に鉄骨造の建物で採用されることが多く、木造での実現は技術的に困難な場合があります。

イ準耐とロ準耐の構造的な違い

イ準耐は主要構造部に準耐火性能を求めるのに対し、ロ準耐は外壁や屋根など特定部位の防火性能向上により全体の準耐火性能を確保します。この違いにより、防火区画の要否や面積区画の規模が変わります。イ準耐では竪穴区画が必要になる場合が多いですが、ロ準耐では竪穴区画が不要になることがあります。

イ準耐とロ準耐の選択基準とポイント

構造種別の選択は建築基準法の制限に大きく影響するため慎重に検討しましょう。イ準耐は適用範囲が広く多くの建築物に対応できますが、ロ準耐は構造的制約が少なくコスト面で有利になる場合があります。建物の用途、規模、構造種別を総合的に判断し、法的要件を満たしながら経済性を確保できる選択を行います。

準耐火建築物が必要となる建物の規模・用途・地域を把握する

建築基準法では建物の規模、用途、建設地域の3つの要素により準耐火建築物とする必要性が決まります。これらの条件を正確に理解することで、計画段階から適切な構造選択が可能になり、後々のトラブルを回避できます。

建物の規模による準耐火建築物の必要性

建築基準法第21条では大規模建築物の主要構造等について規定しており、木造建築物で高さ13m超、軒高9m超、階数3以上、延べ面積500㎡以上のいずれかに該当する場合に大規模建築物となります。これらの条件に該当する建物は、用途に応じて耐火建築物または準耐火建築物とする必要があり、建物の安全性確保が図られています。

建物の用途による準耐火建築物の必要性

特殊建築物と呼ばれる不特定多数の人が利用する建物や災害弱者が利用する施設では、火災時の危険性が高いため準耐火性能が求められます。共同住宅、事務所、店舗、学校、幼稚園、保育所などがこれに該当し、それぞれ異なる規模要件が設定されています。用途ごとの詳細な基準を確認し適切な構造選択を行うことが必要です。

建設地域による準耐火建築物の必要性

都市計画法により指定された防火地域では原則として全ての建築物を耐火建築物とする必要がありますが、小規模な建物は準耐火建築物で代替可能な場合があります。準防火地域では建物の規模に応じて準耐火建築物とする必要があり、22条区域では外壁や屋根の防火性能向上が求められます。地域指定により建築制限が大きく変わるため事前確認が欠かせません。

木造で準耐火建築物を建てる際のポイントを押さえる

建築現場 打ち合わせ

木造建築でも適切な設計と施工により準耐火建築物の建築ができます。従来の木造建築と比較して特別な配慮が必要ですが、木材の温かみを活かしながら法的要件を満たした建物を実現できます。

木造準耐火建築物の設計上の注意点

延焼ラインにかかる開口部には防火設備の設置が義務付けられているため、木製サッシや木製玄関ドアなど自然素材を活用したい場合は配置の工夫をします。延焼ラインを避けた部分であれば天然木の外壁材使用も可能で、設計段階での綿密な計画により理想的なデザインができます。建築会社との早期相談により、制約の中での最適解を見つけられます。

木造準耐火建築物の施工上の注意点

主要構造部の準耐火性能確保のため、石膏ボードの厚さを通常より厚くする、防火被覆を施すなどの対応をします。また防火地域や準防火地域では、後付けするカーポートやサイクルポートも同様の耐火性能が求められるため、建築時からの一体設計が必要です。適切な施工により、見た目は通常の住宅と大きく変わらない建物ができます。

木造準耐火建築物のコストとメリット

建築コストは一般的な木造住宅と比較して1坪あたり5,000円から7,000円程度の上昇となりますが、準防火地域では建蔽率の10%緩和により建築面積を拡大できるメリットがあります。また火災保険料の軽減効果もあり、長期的な視点ではコスト増分を回収できる可能性があります。木材の質感を活かしながら高い防火性能を確保できる点も大きな魅力です。

準耐火建築物のメリットとデメリットを理解する

メリットデメリット

準耐火建築物は防火性能向上により様々なメリットが得られる一方で、建築時の制約やコスト増加といったデメリットも存在します。これらを総合的に理解することで、建築計画における適切な判断が可能になります。

準耐火建築物のメリットとその活用方法

準防火地域での建蔽率10%緩和により、より広い建築面積を確保できることが最大のメリットです。建蔽率50%の地域では60%まで緩和され、限られた敷地を有効活用できます。高い防火性能により火災時の安全性が向上し、木造でも準耐火建築物の建築が可能で、自然素材の温かみを活かしたデザインを実現できます。

準耐火建築物のデメリットとその対策

建築コストの増加と設計の制約がデメリットとして挙げられます。延焼ライン内の開口部に防火設備が必要なため、デザインの自由度が制限される場合があります。しかし延焼ラインを避けた配置計画により、木材を活用した理想的なデザインを実現することも可能です。建築会社との綿密な打ち合わせにより、制約の中でも満足できる建物づくりを進めることができます。

準耐火建築物の保険料や税制上の優遇措置

火災保険では構造級別でT構造に分類され、一般的な木造住宅のH構造と比較して大幅に保険料が軽減されます。建物再調達価額2,000万円の場合、35年間の保険料差額は約60万円にもなり、建築コスト増分の大部分を回収できる計算です。この保険料軽減効果は長期的な住宅コスト削減に大きく寄与し、経済的メリットを実感できます。

準耐火建築物の将来的な価値と評価

準耐火建築物は将来にわたって建物の資産価値維持に大きな効果をもたらします。高い防火性能により安心して住み続けられる住宅として市場での評価が高く、次世代への住み継ぎや将来的な売却時にも有利に働く傾向があります。また安全性の高いエリアとして不動産価値の安定にもつながり、長期的な投資価値を保持できる建物として位置づけられています。

まとめ

準耐火建築物は火災時の延焼防止と避難時間確保を目的とした重要な建築基準です。イ準耐とロ準耐それぞれの特徴を理解し、建物の規模・用途・地域に応じた適切な選択を行うことが大切です。建築コスト増加というデメリットはありますが、保険料軽減や建蔽率緩和などのメリットにより長期的な経済効果も期待できます。

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